2025/10/9

寒くなる季節に気をつけたい「過活動膀胱」

いわさ泌尿器科クリニックです。

朝晩の冷え込みが強まる秋から冬にかけて、「トイレが近くなった」「急に尿意を感じるようになった」というお悩みが増えてきます。

これは、寒さによる血流の変化や自律神経の乱れによって膀胱が過敏になるためです。 このような状態を「過活動膀胱(かかつどうぼうこう)」と呼び、40歳以上の約8人に1人が症状を持つと言われています。

そこで本記事では、寒さによって起こりやすくなる過活動膀胱の原因や症状、治療法について解説いたします。

過活動膀胱とは~

過活動膀胱は、膀胱がまだ十分に尿をためていないのに、急に強い尿意を感じてしまう状態を指します。主な症状は次のとおりです。

  • 尿意切迫感

    急に出てくる我慢できない尿意

  • 昼間頻尿

    日中8回以上トイレに行く

  • 夜間頻尿

    夜中に1回以上トイレのために起きる

  • 切迫性尿失禁

    トイレまで我慢できず、尿が漏れてしまう

これらの症状が複数みられる場合、過活動膀胱が疑われます。特に「尿意切迫感」と「頻尿」がそろっている場合は、この症状の特徴的なサインです。

~原因と背景~

過活動膀胱の原因はさまざまで、脳や脊髄と膀胱をつなぐ神経の異常、前立腺肥大症、加齢、ストレス、冷えなどが関係しています。大きく分けて次の2つのタイプがあります。

  • 神経因性過活動膀胱

    脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病など、神経の障害によって起こります

  • 非神経因性過活動膀胱

    前立腺肥大症や、女性の骨盤底筋のゆるみなどによって膀胱に負担がかかり、過敏な反応を起こします

加齢や寒冷刺激による自律神経の乱れも関与しており、特に秋から冬にかけては、冷えによって膀胱が収縮しやすくなるため、症状が強く出やすい季節です。

また、ストレスや緊張がきっかけとなることもあり、中学生や高校生など若い世代でも発症することがあります。受験期などはトイレのことが気になって集中できなくなるなど、日常生活への影響が大きくなる場合があります。

~他の病気との区別が大切~

頻尿や強い尿意があるからといって、すぐに過活動膀胱と診断できるわけではありません。膀胱がん尿管結石など、同じような症状を引き起こす病気もあるため注意が必要です。

そのため、尿検査超音波検査・CT検査などで他の病気を除外したうえで、過活動膀胱の治療を行うことが大切です。

~治療法~

過活動膀胱は「病気」ではなく「症状」であり、適切な治療によって改善が期待できます。治療の基本は薬物療法で、症状の程度に応じて次のような方法が選ばれます。

  • 内服薬による治療

    膀胱の過剰な収縮を抑える薬や、膀胱をリラックスさせる薬が用いられます。副作用の少ない新しい薬も登場しており、多くの方で症状の改善が見込めます。

  • ボトックス注入療法

    薬で症状が抑えられない場合に、膀胱の表面にボトックス(ボツリヌス毒素)を注入し、膀胱の神経を鎮めて過敏な反応を抑える治療があります。保険適用で行える治療で、内服薬で抑えきれない方にも高い効果が期待できます。

~まとめ~

過活動膀胱は、寒さ・加齢・ストレスなどによって誰にでも起こりうる身近な症状です。放置すると「漏れてしまうかもしれない」という不安から外出を控えるようになり、生活の質(QOL)が大きく低下してしまいます。

しかし、適切な検査と治療により、症状の改善は十分に可能です。
「トイレが近い」「我慢できない尿意がある」などの症状を感じたら、我慢せず、まずは泌尿器科専門医までご相談ください。

※病気の症状等に関しては、下記のページをご確認ください。

膀胱炎
前立腺肥大
前立腺がん
頻尿
尿路結石
性感染症外来

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