2025/7/28
自己導尿の手順と注意点
いわさ泌尿器科クリニックです。
前回の記事において、「自己導尿」についてご説明させていただきました。
自己導尿とは、排尿障害などにより自力で尿を出すことが困難な場合に、ご自身の手で「カテーテル」と呼ばれる細い管を尿道から挿入し、膀胱内にたまった尿を排出させる方法でした。
この排尿処置を定期的に行うことで、尿路感染症のリスクを軽減できるのが大きな特徴です。さらに、膀胱を空にすることで筋肉の伸縮が促され、機能回復が期待できるほか、本来の排泄のしくみに近いため、日常生活を送りやすいという利点もあります。
本日は、自己導尿の具体的な手順や自己管理の注意点について、ご説明いたします。
※自己導尿の詳しい解説については、こちらのページもあわせてご覧ください。

~はじめに/自己導尿の適応について~
通常、膀胱に尿がたまると自然に尿意を感じ、脳からの指令によって尿道が開き、尿はスムーズに排出されます。しかし、この一連の機能(排尿機能)のどこかに障害が生じると、尿をうまく出すことができない「排尿障害」が起こります。
排尿がうまくいかない状態を放置すると、尿が膀胱にたまり続け、尿路感染症や腎機能の低下を引き起こすおそれがあります。そうした合併症を予防し、快適な日常生活を維持するためにも、自己導尿は有効な手段となります。そして、自己導尿の具体的な適応は以下の通りです。
【自己導尿の適応】
- 神経因性膀胱
- 例:脊髄損傷、二分脊椎、パーキンソン病、脳血管障害、糖尿病性神経障害など
- 排尿筋低活動による尿閉・高残尿
- 前立腺肥大症による排尿障害
※薬物・手術で改善しない、または一時的に導尿が必要な場合
- 術後や分娩後の一時的な排尿障害
- 薬剤性の排尿困難
- 例:抗コリン薬、抗精神病薬などによるもの
- 再発性尿路感染・尿管逆流の予防
いずれも、薬物治療を行っても膀胱内の尿を自力で排出できない場合が適応となります。
~自己導尿の手順~
自己導尿は、こうした排尿問題を抱える方が、手順を守って正しく行うことで、安全に尿を排出することができるようになる治療法です。
自己導尿を安全かつ適切に続けるためには、医師の指示に従い、正しい方法で継続することが何より大切となります。以下に、基本的な導尿手順をご紹介します。
■基本の手順
- 手を洗う
石けんと流水でしっかり手を洗い、清潔な状態にします。
- 尿道口(陰部)を清潔にする
清浄綿で尿道口を前から後ろへ1回で丁寧に拭き取ります。
- 衣服を下げ、導尿しやすい姿勢をとる
座位や立位など、ご自身がカテーテルを挿入しやすい体勢をとります。
- カテーテルを尿道口に挿入する
カテーテルを尿道口に差し込みます。抵抗を感じた場合は無理に押し込まず、深呼吸して力を抜きながら、ゆっくりと挿入します。
- 尿が完全に出なくなるまで待つ
尿が出始めたら、そのままの状態で出しきるまで待ちます。流れが弱くなったら軽く腹圧をかけて、残尿の排出を促します。※残尿は感染の原因となるため、しっかり排出することが重要です。
- カテーテルをゆっくり引き抜く
途中で尿が出ることもあるため、少しずつ動かしながら静かに引き抜きます。
- カテーテル使用後の処理
- 使い捨てタイプの場合:そのまま廃棄します。
- 再利用タイプの場合:消毒液を入れた専用ケースに保管します。
■女性の方へ
女性は尿道口の位置がわかりにくいため、慣れるまでは鏡で確認しながら行う方法や、指で触れて位置を覚える方法があります。尿道口の位置を探すポイントや挿入のコツを医師や看護師が丁寧に指導いたしますので、繰り返し行うことで徐々にスムーズに導尿できるようになります。
なお、ご自分での導尿が難しい場合には、医療機関にてご家族の方を対象とした導尿手技の指導も行っています。不安なことやご不明な点がありましたら、ご相談ください。
~自己導尿を安全に行うための注意点~
自己導尿を安全かつ効果的に続けるためには、水分摂取量の管理や導入回数の適正化が必要であるため、日々の管理や記録、医師との連携がとても大切です。以下の4つの点にご注意ください。
- 導尿の回数について
- 1日の導尿回数は、自力排尿の程度や1日の尿量、残尿の量によって異なります。
- 一般的には、膀胱に400ml以上ためないよう、朝・昼・夕・就寝前の1日3~4回の導尿から始め、症状や残尿の状態に応じて医師の指示で調整します。
- 残尿が少なくなっても、自己判断で中止せず医師に相談してください。
- 1日の導尿回数は、自力排尿の程度や1日の尿量、残尿の量によって異なります。
- 水分摂取について
- 1日1,000〜1,500mlを目安に水分摂取を心がけてください。
- 水分制限のある方は医師に確認してください。
- 排尿日誌の記録と活用
- 自然排尿と導尿の量を記録し、受診時に持参してください。
- 状態把握や治療調整に役立ちます。
- 副作用・合併症について
- 痛み・不快感・尿路感染症などが導入初期にみられることがありますが、徐々に軽減します。
- 感染予防のため、導入初期は抗生物質を投与する場合があります。
~おわりに~
自己導尿は、適切な方法で続けることで、排尿トラブルによる不安を軽減し、膀胱機能の回復や感染予防につながる大切な治療です。
最初は不安を感じるかもしれませんが、医師や看護師の指導のもと、繰り返し行うことで徐々に慣れていき、日常生活の一部として取り入れることができるようになります。
いわさ泌尿器科クリニックでは、患者様お一人おひとりに合わせた丁寧な指導とサポートを大切にしています。少しでも不安なことや、お困りのことがありましたら、遠慮なくご相談ください。
※病気の症状等に関しては、下記のページをご確認ください。